ハートロッカー The Hurt Locker

今週末のアカデミー賞でベストムービーにもノミネートされているハートロッカーです。
戦争を題材にした映画なのですが,女性の監督で,「アバター」のジェームズキャメロンと元夫婦だそうです。 女性監督は戦争映画を扱えないと言っているわけではなく,この映画のクオリティや視点からとても男性的な印象を受けたので,少し意外でした。

2004年のバグダッドを舞台とし,3人の爆弾処理班に配属された新しい兵隊を中心とした,バグダットの混沌の中でもがく兵隊たちを描いた作品です。 次のチームと交代するまでの1ヶ月半ほどの出来事を,主に彼の視点から描いています。

冒頭のシーンは特に印象的で,爆弾を処理する人たちの緊張や,ただ爆弾を処理するだけでなく,狙撃手がいたりリモートで爆弾を操作するのを阻止するために周囲にも気を配らなくてはならない他の兵隊のチームワークなども細かく描かれています。 新しく配属された男は,爆弾解体に関しては凄腕なのですが,チームワークや人付き合いに関してはまったく不器用です。 それが故に他のチームメートとの摩擦や,基地の近くで親しくなったイラク人の少年との交流も興味深い点です。

いくつかの見所があるのですが,冒頭のシーン,長距離狙撃のシーン,爆弾を体に巻き付けられてしまった男のシーン,最後に主人公がまだ産まれたばかりの息子に語りかけるシーンから最後のシーンへのつなぎは特に注目です。

主人公のジェームズを演じるジェレミーレナーは,先日観た「28日後…」にも出ており,ここでもゾンビから子供を守りつつ逃げる兵隊の役を好演しています。

この主人公の男のように,戦争のような究極の環境でのみ自己の存在意義というか,自分の居所をこういう場所にしか見いだせない人というのはいると思います。 いい,悪いという問題ではなく,ただ単にそういう人がいるという事実があるだけです。 またバグダットの人たちの市民から見れば,確かにアメリカ軍は邪魔に見えるでしょうし,アメリカ軍がいるからテロがなくならないのでは,という見方も成立すると思います。 ただああいう街中などで,周囲のどこから襲われるか分からないという恐怖は,その場にいたものでないと分からないだろうと思います。

これは「観るべき一本」といっていいでしょう。

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