TOEIC 730???

最近,Yahoo Japanで就職活動と求められるTOEICスコアに関する記事を見つけました。 このブログでも何度かこのテーマで書いた記憶もあるのですが,また飽きずに書く事にします。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121121-00007844-president-bus_all&p=1

タイトルに「TOEIC 730以上で語学力を評価」とあり,武田製薬(ここは海外人材育成にかなり力を入れている)でも730以上のスコアを応募条件に取り入れるとありますが,正直何故730という中途半端で,どちらかというと特に高くもないスコアで設定するのか分かりません。

語学や留学,教育に関して海外でずっと携わって来ているものから見ると,730なんて独学のレベルです。 もっと言ってしまえば,730には価値はないと言いたいくらいです。 ましてや会話力の観点からすると「多少の会話が出来るのかな?」というレベルです。 到底海外のパートナーたちと対等かそれ以上に英語のみでやり取り出来るレベルではないでしょう。 もっとも15年や20年前のように採用後にもっと英語力を上げさせるような教育やトレーニングを授ける心づもりが企業側にあるのであれば話は別ですが,最近の企業の動向や余裕のなさなどから見ると,到底そのような意図があるとは思えません。 以前よりももっと即戦力の人材を期待しているはずです。

そもそも「何故未だにTOEICなのか?」という壊れたレコードのような問いは依然として残るのですが,それはさてきおきTOEICで英語力を測定し,英語のみでの海外とのやり取りなどの期待をするのであれば少なくとも850前後はないといけないでしょう。 このくらいであれば,私の経験からいっても本来のTOEICの目的であるコミュニケーションが伴うレベルであるかと思います。

このTOEIC偏重の傾向は昔からあるわけですが,人材を求める側に海外と事を進めるためのスキルや英語力がどの程度必要なのか,実感として分かっているのでしょうか? もちろん現場側と確認した上で設定を行うのでしょうが,数字以外の部分でTOEIC730がどの程度の実力を指し,英語のみで仕事をするために求められるレベルがどの程度必要なのかということが分かっているのだろうかと思います。

ここで大切なのは「英語でコミュニケーションが取れる」ということと「英語で仕事の場面で相手を説き伏せ,有利な条件でことをすすめるスキル」には格段の差があるということです。 単に接客をする程度であればコミュニケーションが取れるだけでいいと思いますが…。

2ページ目では色々な学校(主に立教)の状況や対策などがあり,独学で960を取った学生さんの話もありますが,やっぱりこのくらいの意識の高さでないといけないと思います。 最近では山梨大が2015年を目処に授業を全面的に英語に移行とありましたが,そのくらいどんどんやればいいと思います。 大学側も生徒獲得に必死なので,このくらい極端な改革をしていく必要があるし,それにこの英語力を絡めていくというのは学生の質を高めていく上でも有効だろうと思います。 英語のみの授業を取っていくことが就職活動への準備(英語力のみに限っていえば)にもつながっていくので,通常通り4年で卒業できれば,間に英語力を高めるために「休学留学」をしなくても済むようになります。 つまり人材育成の準備期間(=大学在籍期間)で余分な時間がかからずメリットがあるわけです。

現在,私の仕事では主にアジア全般の学生のニーズに触れる機会が毎日あるのですが,TOEICを重視しているのは日本と韓国,それと台湾くらいのものです。 その中でも韓国は最近ケンブリッジ英検へ興味が移ってきています。 TOEICよりもレベルも高いし,英語力測定もより正確,かつヨーロッパを中心に広く認知されているからです。 またIELTSは依然としてほとんどの英語圏で採用されています。 進学が目的の人はやはりTOEFLとIELTSですね。

また日々留学生に触れていると,日本の留学生と他国の留学生の意識の差にいつも愕然となります。 もちろん日本以外の留学生もいわゆる遊学の人は多くいますが,「英語が話せるようになりたい」ということが最終目的で留学を考えているのは日本くらいのものではないかと思います。 これは留学が一般的になりはじめた80年代からずっと変わっていません。 もちろん1,2ヶ月くらいの短期留学であればそれでもいいと思います。 が,大学生の休学留学(最近のトレンド)であれば,もっと意識を高くもち,一般会話くらいはダッシュで終わらせ,何か本当に身になるようなことを成し遂げて帰国するくらいのつもりでないと時間とお金のムダになるだろうと思います。

つまり目標を大きくかつ遠くに設定しておけば,仮にそこに到達しなかったとしても一般的な英語力程度は簡単に身に付くということです。

幕末から明治にかけて日本は人材を海外へ送ってきました。 海外の列強に支配を受けないために日本が強く独立しないといけない状況に追い込まれていたからですが,このままでいくとアジアの他の国からの経済支配の下に置かれかねません。 現に中国には経済規模で抜かれていますし(中国の経済に関する報告が正確なのか?という疑問はありますが)韓国企業はクルマやIT,携帯や電化製品の分野で抜かれかねません。

繰り返すようですが,日本の英語に対する意識は80年代や90年代からまったく進歩していません。
それに他のアジアの国からも意識の面では大きく遅れをとっています。 留学や教育の結果が出るのは数年後から10数年後です。 他国との繋がりの中で今後の日本の立場がかなり懸念される状態です。 今の大学生やこれから大学生になる人たちの意識を早急に変えて行く必要があるでしょう。

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